THE PRINT – 痕跡
CONCEPT
すべて人工的につくられた地盤と景観に囲まれる都市、お台場。過去の名も知れぬ多くの先人の英知、ひらめきと努力の結晶で、現代の都市の多くは成り立っています。今回制作される作品のモチーフは「指紋」。それは「個」のアイデンティティーの象徴であるとともに「人類」という種族の自然への介在の痕跡でもあります。
しかし痕跡はそのルーツや源流、本来の目的を辿って行こうとしても解き明かせない迷路のようなもの。この作品は私達が切り崩してきたけれども、それでも強く生きようとする自然との関係性もテーマにしつつ、人類が探し求めた見えない目的を体験する作品であり、私達の新たな出発点について考えてもらう作品です。
ビデオメッセージ
アフタートーク
REPORT
背丈の低い植木でつくられた垣根の迷路のようなこの作品には、約30種類もの植物が使われました。迷路の中心部の地面にはQRコードが表示されたサインがあり、スマートフォンで読み取ると、上空から眺めた作品の写真を見ることができ、この作品が「指紋」をモチーフにしていることを知ることができる体験も。子どもたちは楽しそうに走り回り、それをお父さん・お母さんが物見台の上から、右、左と進路を教えている姿も見られました。アートフェスティバルのテーマであるNEW SCALEにちなみ、人間が実際に歩いてSCALEを実感できる作品です。
最終日には、作品を構成した植木を希望者に配布するイベントも実施しました。立ち寄られた方々は思い思いに好みの植木を選び、嬉しそうに持ち帰っていました。
開催期間:2022年9月16日~25日
PROFILE
ブエノスアイレスをベースに国際的に活動する現代アーティスト。日本でも数多くの作品が紹介されているが、2017年に森美術館で開催された個展は様々な世代の観客を集める人気のある展覧会となった。2019年の瀬戸内国際芸術祭や恒久設置作品となっている大型作品「Palimpsest: 空の池」を完成させた2018年の大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレへの参加も記憶に新しい。2001年にアルゼンチン代表としてベネチア・ビエンナーレに出品された「スイミング・プール」は2004年の開館以来、金沢21世紀美術館の恒久設置作品となっている。
http://www.leandroerlich.art/
企画協力
アートプログラムの企画から実施まで、作家とともにコーディネートするチーム。アートフロントギャラリーに勤務したのち、2019年 ArtTank設立。展覧会、パブリックアート、越後妻有アートトリエンナーレや瀬戸内国際芸術祭などの地域芸術祭等、多様なアートプロジェクトの企画から制作まで1000を越える制作経験をもとに、アーティストのアイデアやプロジェクトを実現する「アーティストのためのスタジオ」として活動。「Leandro Erlich : The Confines of the Great Void」(中国中央美術学院美術館)、「Leandro Erlich : Both Side Now」(ソウル市北ソウル美術館)、「Meet Your Art Festival “NEW SOIL”」(avex)等、国内外のアーティスト、美術館、企業のアート企画、制作をコーディネートするほか、自主事業として「Tanker Project」を進行中。
https://arttank.co.jp/
協賛
本作品の制作をご担当いただいた五嶋造園様には、作品を構成するすべての植物をご提供いただきました。
http://goto-zo-en.co.jp/
CONCEPT
人の背よりも高い白いオブジェは、よく見ると人体の形状を模している。「歩く」という人々にとって根源的な動作が回転によって立ち現れ、この大きな人は「どこか」へ向かって歩き続けている。これらの作品の原型は、パンデミックによって物理的な移動が困難になり、作者自身も制約を受けたなかで、人間は移動する生き物であること、動き続ける存在であることを改めて実感したことから生まれた。作品の台座は方位を表すクロックポジションの形をしており、混沌としたこの時代において、人々は今どこを歩いているのか、どこへ向かおうとしているのか、その選択肢を示そうとしている。
また、周囲には作者が訪れた世界各国の交差点で撮影した歩く人々が閉じ込められた、小さな箱型の作品が点在しており、彼らも同じように、どこかに向かっている。その先で何が起こるかを前もって知ることはできないが、人は前へと歩く。多くの人が行き交う臨海副都心に情景を重ねながら、歩く人々の姿が浮かび上がる。
REPORT 回転するワイヤーフレームで作られた2体の人物像は、歩き出す人の姿をいくつかに分解し、それらをワイヤーフレームで製作し、1回転すると1歩踏み出すようにつくられました。どの方向から見ても歩き出す姿を見出すことができ、また様々な方向に歩きだそうとしているようにも見えるオブジェです。周囲にある12個の箱の中には、交差点を歩く様々な人の姿をワイヤーフレームで象ったものを円周上に並べて回転。箱の中にはライトが仕込んであり、その光で歩き出す人の姿が浮かび上がる仕組みです。また箱の上面は透明なスリットが入っていて、晴れた日中には、そのスリットから差し込む太陽光で歩く人が浮かび上がります。夜はライトアップされ、天候や時間によって違った楽しみ方ができる作品です。
開催期間:2022年9月16日~25日
PROFILE
アーティスト。1984年岐阜県生まれ。原初的なメディアや素材から、現代的なテクノロジーまで、さまざまな手法を用いて、動きや時間、そしてそこから立ち現れる生命感を主題に据えた作品を制作している。近年の主な展覧会に、2022年「光‧舞弄‧影-2022 臺灣國際光影藝術節」台湾国立美術館(台北)、2021年「生態系へのジャックイン展」見浜園(千葉)、2020年「高松コンテンポラリーアート・アニュアルvol.09 時どきどき想像」高松市美術館(香川)、2019年「Ars Electronica Festival 2019」POST CITY(リンツ)など。現在、武蔵野美術大学准教授。
https://www.akinorigoto.com/
CONCEPT
夢の広場は芝生に覆われ、1kmのシンボルプロムナードが続く。
初めて広場を訪れたとき、芝の一部は囲われ、散水養生をする作業員のほかに人影はなかった。その光景は時折公園で目にする「入れない芝生」を思い出させる。駅から来る人々はどこかを目指して広場を迂回した。広場の周りの看板や植え込み、銅像なども、囲いと相まって入りづらさを作っているのだろうか。囲いは場所を二分し、内側を切り離して意味を変えてしまう。その特徴をひっくり返すことで、広場に新しい領域を生み出せないだろうか。
5月らしからぬ強い日差しの下、長大なプロムナードを歩くと、灯台のような街灯、日を浴びるベンチ、控えめな散歩コースのサインなど、孤立したオブジェ群と遭遇した。それらも囲ってしまえば、違う意味が生まれるのではないか。唐突に出会う変化したオブジェ群が、プロムナードを繋ぐ領域を作るだろう。
この臨海副都心に野生のテリトリーが出現する。
REPORT
水色のスタイロフォームを使った円形の低いベンチのような「囲い込み」とピンク、イエロー、ブルーの布がポールで張り巡らされ、いつもの芝生広場がまるで遊園地になったような楽しい空間を形作りました。囲い込みをベンチがわりにして座る人、囲い込みの中で遊ぶ子どもたち、広場を散策しながらそれらを見る人…、見られる人と見る人があるときは入れ替わり、それぞれがこの空間をシアターのように楽しんでいました。
夢の広場から夢の大橋を経て続く約1kmのシンボルプロムナード公園内にもいくつものオブジェ(ストリートファニチャー)を展示。作品近くの養生テープに印字されたQRコードを読み取ると、オブジェがある場所やタイトルなどを知るMoving MAPにアクセスできる仕掛けも。プロムナードを散策しながら、さまざまな場所でオブジェと出合い臨海副都心という土地の広がりを体感できる作品です。
開催期間:2022年9月16日~25日
夢の広場(シアター空間)
シンボルプロムナード公園内 各所(ストリートファニチャー)
Concept & Map(PDF)
PROFILE
向山裕二、上野有里紗、笹田侑志からなる建築コレクティブ。2013年に結成。日本とヨーロッパで経験を積み、2018年より東京をベースに設計活動を開始。都市文化を批評的にとらえなおしつつ、建築的介入を創り出す。建築や家具の中に、特定の機能を持たない象徴的な形を忍び込ませ、ひとびとに気づきを与えるデザインを試みている。 Frame Awards 2021, Set Design of the Year受賞、iFDesign Award 2022, Window display部門受賞。
https://ultrastudio.jp/
CONCEPT 2021年10〜11月、高橋信雅が「ARTBAY HOUSE」の壁面に描いたのは、ペリーや江川太郎左衛門英龍、街並みに動物、宇宙人やロボット、馴染みのあるものから浮世のものまで、古今未来の臨海副都心と、旅立ちの日の出。建築家の萬代基介氏が8つのキューブをコンセプトに設計した「ARTBAY HOUSE」が解体され、8つの板(モノリス)となり宇宙へ飛び立つ瞬間を描きました。今回の作品は「古今未来臨海副都心」のアフターストーリーとして、飛び立った8つの“モノリス”が遥か宇宙の彼方で「空白」を彷徨いながら想いは街のカタチを留め、再び結合する時を待っている姿を描きます。
REPORT 2020年9月10日にオープンした東京の新しい海の玄関口、「東京国際クルーズターミナル」に展示された「臨海副都心ユニバース」は、さまざまな社会情勢がある中でも「もっと楽しい未来を想像することが必要」との想いから描かれました。作品の中のイラストとイラストはシナプスでつながり、一つの世界を構成し、「これからの臨海副都心は、楽しい未来を描く場所、新しいプラットフォームになって欲しい!」という高橋信雅さんの思いが込められています。未来を紡ぐように描かれた絵巻物を見るように、連続した様々なイメージに来場された皆さまもじっくり見入っていました。
開催期間:2022年9月16日~25日
PROFILE
桑沢デザイン研究所卒業。東京と鬼ヶ島を拠点に国内外で活動しているアーティスト。線描による表現は、日本で は「洋」を海外では「和」を感じさせる独自の世界観を生み出している。美術館や商業施設などへの壁画制作、グッズ、商業デザインなど、様々なジャンルで作品を発表。ニッチな制作と立証実験を続けている。代表作でもある「ジャパニーズグラフィティシリーズ」は漫画や日本の伝統的な手法も取り込み、マイクロソフト、コンバース、ワコールなど企業とのコラボレーションも行なっている。
http://www.nobumasatakahashi.com